事件番号:JP2012-0014 裁 定 申立人: (名称)アリババ グループ ホールディング リミテッド (住所)英領西インド諸島、ケイマン諸島、グランドケイマン、ジョージタウン、私 書箱847、ワイキャピタルプレイス4階 代理人:弁護士 窪田英一郎、弁護士 今井優仁 登録者: (氏名)MA DEYIN. (住所)東京都江東区南砂2丁目3番5-826室 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JP ドメイン名紛争処理方針、JP ドメイン 名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センターJP ドメイン名紛争処理方 針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立書・答弁書および提出された証拠に基 づいて審理した結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 ドメイン名「taobao.jp」の登録を申立人に移転せよ。 2 ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「taobao.jp」である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人 申立人は、提出した申立書において、日本および世界各国において申立人が出願しま たは登録済みの商標「TAOBAO」「TAO」「Taobao.com」「淘宝」「淘」「淘宝网」「淘宝城」等、 申立人の著名なTaobao 関連商標を使用しており、登録者が悪意に基づいて紛争に係わるド メイン名を登録し使用していると主張する。申立人によれば、当該ドメイン名は、申立人 の商標と混同を引き起こすほどに類似し、登録者はドメイン名について正当な利益を有し ておらず、そしてドメイン名は悪意(不正の目的)で登録し使用されていると主張して、 ドメイン名登録の申立人への移転を請求した。 b 登録者 登録者は、当該ドメイン名の登録は、2010 年11 月1 日であって、申立人の日本におけ るTAOBAO 商標が登録された2011 年2 月18 日よりも以前の日である。2010 年当時、日本で 「淘宝网」はあまり知られておらず、「ドメインの早い者勝ち原則」から、当該ドメイン名 を譲ることはできない。また、当該ドメイン名を使用して一般公開しているサイトは、個 人のブログサイトで、リンク集の掲載もしているが、インターネット・ユーザーの便利の ために作成しており、IT 技術の知識交流、勉強を目的としているから、申立人商標を毀損 する意図なく公正に使用しており、申立に理由はないから棄却すべきである、と主張した。 5 争点および事実認定 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則に ついてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述・文書および審問の結果 に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならびに条理 に従って、裁定を下さなければならない。」 方針第4条aは、申立人が、次の事項の各々を証明しなければならないと指図する。 (1)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示 と同一または混同を引き起こすほど類似していること (2)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有していないこと (3)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること (1)申立人表示と登録者ドメイン名の類似(第1要件) ア 申立人の表示 申立人は、日本において、商標「Taobao.com」(指定商品・役務を9 類、35 類、38 類、 42 類とする2009 年1 月09 日に登録された商標(登録第5195935 号)で、「淘宝网」とい う文字列と「Taobao.com」の文字列を読み取ることができるロゴを含む図形商標、以下、 登録商標1という)、商標「TAOBAO」(指定商品・役務を9 類、16 類、35 類、38 類、41 類、42 類とする2011 年2 月18 日に登録された商標(登録第5391504 号)、以下、登録商 標2という)等、文字列「Taobao」または、称呼「タオバオ」を含む中国文字等から成る 図形商標について、日本における商標権を保有し、また、同種の商標につき、世界各国に 商標登録を有している(甲第2 号証)。なお、申立人は、申立書4.(2)アにおいて、自己のビ ジネスと「TAOBAO」ブランドの広告宣伝費等について縷々説明するが、それら広告宣伝 費が特定の表示について投資されたものということが明らかにされていないため、不正競 争防止法上の商品等表示との主張と受け取ることができない。ただ、第1 要件にいう「申 立人が権利または正当な利益を有する商標その他の表示」を認定するには、上記商標が登 録された事実のみを指摘すれば十分である。 イ 登録者ドメイン名との類似 これに対して、登録者が2010 年11 月01 日に登録したドメイン名の要部、すなわち、「.jp ドメイン」であることを示す記号として、その部分のみでは要部となりにくい「.jp」の部 分を除く文字列「taobao」の部分は、申立人が保有する登録商標1の要部および登録商標 2の文字列全部と、同一である。登録商標1は、文字列「淘宝网」と、文字列「Taobao.com」 を組み合わせたロゴであるが、そこから生じる称呼は、「タオバオ ドット コム」または 「タオバオ コム」であり、タオバオという名称のインターネット上のビジネスと認識さ れている。申立人は、開業当初よりC2C(消費者間)ネット販売プラットフォームを提供 するビジネスを運営し、世界で最も訪問者の多いウエブサイト20 件のうちの1件とされて いて(申立書4.(2)ア)、需要者が登録商標1をみたとき、「com」ないし称呼「ドット コ ム」「コム」の部分につき、出所識別する意義ではなく、単にネット通販というビジネスの 種類の表示と捉えるにすぎず、「タオバオ」の部分を出所識別できる部分と捉えるからであ る。中国語である「淘宝」も音訳すれば「タオバオ」であり、国際化ドメイン名ないし多 言語ドメイン名による検索が一般的でないことを考えると、申立人が展開するビジネスの 顧客は、登録商標1をみたときに、「淘宝」ではなく、「taobao」「タオバオ」として申立人 ビジネスを認識するので、登録商標1が図形商標ないしはロゴ商標であるとしても、要部 は「Taobao」の部分と認識されるというべきである。したがって、登録商標1の要部「Taobao」 および登録商標2と、登録者のドメイン名「taobao.jp」の要部「taobao」は同一であり、 全体としてみると、申立人の登録商標1および登録商標2は、登録者ドメイン名と、混同 を引き起こすほどに類似するということができる。 この点で登録者は、答弁書において、あたかも方針4 条a 項(i)にいう、「申立人が権利ま たは正当な利益を有する商標その他の表示」が、日本における権利のみを指し、ドメイン 名「taobao.jp」の登録よりも遅れた商標登録なので、そもそもそれら商標は権利または正 当な利益を有さないと受け取れる主張をしているが、規定の文言上、日本における権利の みに限定するように解すべき根拠は無く、また、仮に登録者の主張通りに解するとしても、 申立人の登録商標1は、「taobao.jp」ドメイン名登録よりも先に権利が付与されており(登 録商標1の日本における登録日は、2009 年1 月09 日、ドメイン名「taobao.jp」の登録日 は2010 年11 月01 日である)、登録者の主張はあたらない。なお、答弁書3.(2)において、 登録者は、2010 年当時、日本において「淘宝网」があまり知られていないと主張するが、 その根拠が明らかでないうえ、日本において認知されているか否かという論点は、申立人 が日本における不正競争防止法上の商品等表示を自己の表示として主張する際に、申立人 表示が周知性または著名性を有していないと登録者が反論する際においてのみ、論点とさ れるにすぎず、本件では、申立人が商品等表示の主張をしていないから、日本における認 知度は、(他の要件についても)重要な反論材料とはならないと考えられる。 以上のように、第1 要件は、申立人の主張する結論の通り、申立人の保有する商標権と 登録者のドメイン名とは、混同を引き起こすほどに類似しているということができる。 (2)登録者の権利または正当な利益(第2 要件) 登録者は、答弁書において、自らが商標登録または商品等表示などの権利を保有してい ると主張しておらず、商標登録データベース検索によっても、登録者が権利を保有してい る事実は発見できないばかりでなく、文字列「taobao」を含む社名の会社経営を行ってい る等の事情もない。さらに、文字列「taobao」は、「淘宝」の音訳であること以外、英語で は何らの意味も有さず、また、中国語においても一般的な意味を有する語でもない造語で あることに加え、登録者の氏名「馬徳印」は、文字列「taobao」「淘宝」いずれにも外観・ 称呼において類似しない。 この点、登録者は、ドメイン名「taobao.jp」を登録した理由を、「『taobao.jp』が中古ド メイン(であり、)サイトとして一般公開すれば人気が集まりやすいを(ママ)考えて登録し、自分 の個人ブログサイトとして利用してきました。」と述べている(答弁書3.(2)。ただし、『マ マ』の記載(日本語表記としては誤っているが、答弁書の当該箇所記載通りであることを 表す記載である)、および上記( )内の表記は、本パネルが補った)。しかし、ブログサイト に当該ドメイン名を用いなければならない必然性、ないし、その理由は、示されていない。 また、登録者は、申立人taobao サイトの認知度等を論じるが、第2 要件は、登録者自らが 当該ドメイン名登録を有するために正当な理由があることを必要とするという内容であり、 他者に対する批判をもってこれに替えることはできない。 以上のことから、登録者は、ドメイン名「taobao.jp」の登録につき、正当な理由を有し ていないということができる。 (3)不正の目的での登録または使用(第3 要件) 申立人は、「登録者は紛争に係わるドメイン名について何らの正当な権利も利益も有して おらず、そのこと自体が悪意(不正な目的)の証拠である」、ないしは、Taobao 関連商標 と類似するドメイン名の「回復申立て」に熱心であることを、不正目的の理由のひとつと して主張する。しかし、第3 要件は、そもそも、登録者が登録時点において不正な目的を 有しているか、または登録時点においては不正目的を有していなかったとしても、後の使 用時点において、登録者自身が登録して使用(ないしは保有)しているドメイン名登録や、 他人が当初登録して後に譲り受けた現在の登録者が、当該ドメイン名の使用が不正である という事情を知った後に、それにもかかわらず使用(ないしは保有)を継続した場合に、 当該要件具備を認める判断をすべきものであり、その判断は、基本的に登録者側の客観的 事実に基づいてなされるのを原則とすべきである。したがって、第3 要件は、申立人の上 記主張のように、申立人側の行為を勘案して認定すべきではなく、また、第2 要件が認定 されれば、即第3 要件も具備というような判断枠組みの要件ではないから、この点におけ る申立人の主張には理由がない。また、申立人は、「taobao」という語が、taobao 関連商標 以外には英語では何らの意味を有さないという事実が、登録者の不正目的につながると主 張するに際して、申立書に当センターの裁定(JIPAC2012-0002)を引用するが、同裁定は、 第2 要件について造語である事実を理由としているだけであるし、加えて申立人は、その 主張の根拠を説明するに際して、UDRP(ICANN が策定したgTLD ドメイン名についての 統一紛争処理方針)に基づくWIPO 裁定を繰り返し引用するが、本仲裁パネルが用いる紛 争処理方針(JP-DRP)とUDRP は、第3 要件について要件内容を異にしており(前者は、 不正目的を要求する対象につき、「登録または使用」と規定するが、後者は、「register and use」(登録かつ使用)という文言である)、少なくとも規範の内容と先例における判断が異 なる部分である第3 要件に関連して、UDRP に基づく仲裁判断を参考にすることには、き わめて慎重でなければならない。この点、申立人は、「悪意にもとづいて、紛争に係わるド メイン名を登録し使用している(方針4 条(a)(iii))」と申立書5.(5)最終の一文で述べており、 その背景は、登録と使用を連続したものとして位置付けるか、両者を区別せずに混同して 記載しており、いずれであっても適切さを欠く。 さらに、申立人は、登録者が最低1万米ドルであれば売却してもよいと電子メールで知 らせてきたと主張する。ただ、申立人が示す甲43 号証は、「www.taobao.jp@gmai.com」か ら「domaintrades@gmai.com」宛てに送信された電子メールであり、前者の電子メールア ドレスは、登録者に関するWHOIS 情報(JPRS によって提供されている)に連絡先として 登録された登録者のアドレスと異なっており(申立人から当該証拠に記載された電子メー ルアドレスが登録者のものであるという証拠は提出されていない)、申立人が指摘する事実 のみをもって、登録者が販売等を主たる目的として当該ドメイン名を登録したということ はできない。 以上のように見てくると、申立人の主張には、疑問を抱かざるを得ない点が多い。しか しながら、登録者の主張である、ドメイン名「taobao.jp」を用いたウエッブサイトの「主 な内容は登録者の個人ブログです。」、ないし、「IT エンジニアのため、ブログサイトで日 本の『仲がよい友達』や『インタネット(ママ)で知らないお友達』とIT 技術を交流し、お互いIT の知識を勉強するのは最大の目的」であるから、公正な使用であるという主張(答弁書3.(3)) を、本パネルは信じることができない。少なくとも、登録者の本件ドメイン名使用行為は、 商業上の利得を得る目的で、登録者自身が登録している異なるドメイン名「baido.jp」を用 いて登録者自身が運営しているウエッブサイトに誘引するために、本件ドメイン名 「taobao.jp」を使用しているものと考える。かように考えることができると、その使用行 為は、紛争処理方針第4 条b(iv) により、不正の目的でなされたと認定しなければならな いこととなる。そこで、そのように考えるべき理由を次に述べる。 登録者が、本件ドメイン名を用いているサイトは、答弁書3.(3)において登録者自身も認 める通り、当該サイトにアクセスしてきたユーザーの便宜のため、「天気予報」ナビゲーシ ョン、「健康」ナビゲーション、「グルメ」ナビゲーション、「ダイエット」ナビゲーション、 「銀行」ナビゲーション、「日本各地の放射線測定サイト」などのリンク集が掲載されるコ ンテンツを含んでいる(申立書4.(4)第6 段落における「本申立ての時点で、本件ウエッブ サイトには、主に日本語で表記されているウエッブサイトや広告に繋がる様々なハイパー リンクやスポンサーリンクが貼り付けられており」という申立人の主張とも一致する)。そ して、登録者は、「baido.jp」ドメイン名についても登録しており(JPRS のWHOIS 検索 結果による)、このドメイン名の下に運営されるウエッブサイトもまた、トップページを総 合リンク集としており、同サイトの右側カラム(右側4分の1ほどを占めるフレームのさ らに右下部)には、最新コメントを表示できるようにされている。そして、申立人の主張 によると、少なくとも申立て時点において、本件ドメイン名をウエッブブラザに入力する と、登録者が登録している「baido.jp」をドメイン名とするウエッブサイトに自動的に誘導 されるのであり(申立書4.(2)イ)、これに反する証拠はない。したがって、申立人が展開す る淘宝网(taobao.com)の日本語サイトであると誤認して「taobao.jp」にアクセスしたイ ンターネット・ユーザーを、ドメイン名「baido.jp」の下に運営される登録者のサイトに誘 引するために本件ドメイン名「taobao.jp」を使用しているということができる。登録者は、 その登録目的を、「サイトとして一般公開すれば人気が集まりやすいを考えて登録し」たと 述べており(3.(2)第1 段落)、taobao.jp サイトが「人気が集まりやすい」と考えた理由は、 taobao.com またはtaobao 商標の下に展開される申立人のビジネスが存在しているからと しか言いようがない。すなわち、ユーザーを誤認させるためであることを登録者自身が認 識していたということができる。 次に、その誘引行為が商業上の利得を得る目的といえるかが問題となるが、リンクを提 供することによって一定の広告収入(アフィリエイト広告収入)が期待されることは、一 般に知られているところであるし、登録者サイトには、グーグル社が運営するアドセンス 広告が導入されているから、広告料収入を得る目的を有することは明らかであろう。また、 本パネルが2013 年3 月5 日行ったウエッブサイト検索の結果によれば、以下の3つの事実 を確認することができる(なお、パネルが独自の調査をすることが許されるかという点に ついては、商標登録データベース等の公開情報、登録者等の過去のウエッブサイトの使用 状況を確認するためのサーチ等は許されるとするのが、WIPO パネリスト間で合意された 見解であり、本パネルも手続的事項であるので、この見解を採用する(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions, Second Edition ("WIPO Overview 2.0"、 4.5, http://www.wipo.int/amc/en/domains/search/overview2.0/#45"))。すなわち、確認でき る事実は、①当該サイトのメタタグ情報として、第三者が運営するサイトに紹介されたデ ータによると、登録者が「taobao.jp」において運営するサイトは、そのタイトルを「Taobao.jp -中国淘宝taobao_taobao ショッピングサイトに関する総合リンク集」としており、また、 ウエッブの記載内容として紹介文として用意されるのを通例とするdescription において 「タオバオ出店代行や淘宝購入代行、そして中国シッピングサイト,中国音楽ダウンロード, 中国語教室などの情報を日本の皆様に無料で提供します。ぜひtaobao.jp をご覧ください」 と記載されている(http://taobao.jp.foxmos.com/による。いつの時点のメタタグかは定かで ないが、少なくとも一時点においてそのようなメタタグが採用されていたことを推認する ことができる)。メタタグは、サイト運営者自身が記載するものであり、本件の登録者が自 ら商業的利得を得る目的と述べていることになる。②登録者自身のブログサイトにおいて も、「一円でも多く稼げるために、グーグルアドセンス広告をサイト内に掲載しました。個 人サイトなので、アクセス数が若干少ないですが、広告掲載してから半年間、3万の広告 収入でした。そしてA8広告も貼っているから、何とか年間広告収入を10 何万が稼げる。・・・ (中略)・・・ 私のような、お遣い(ママ)稼ぎのために、サイトにアドセンス広告を掲載している 方は多くいらっしゃると思います。」との記載が認められる (http://www.baido.jp/blog/data/40.html、ただし、『ママ』の記載は本パネルが追記した)。 ③同様に、Yahoo 検索エンジンに本件ドメイン名「taobao.jp」を検索語として入力して得 られる検索結果に含まれるブログサイト(http://blogs.yahoo.co.jp/www_taobao_jp)には、 「2 年前、taobao.jp ドメインを手に入れた。もったいないので、アドセンスをサイトに入 れた。意外にお金を稼げました。嬉しいね」との記載が認められる(③のブログサイトは、 登録者本人が運営している確実な証拠はないが、サイト内記載が登録者のWHOIS 情報と 反することはなく、登録者自身によって運営されていることが推認される)。以上3件の事 実に加えて、上記taobao.jp ドメインによって誘導されるサイトを開くと、まず目に入るの は、「baido.jp 総合リンク集」というタイトルと、各種リンクであって、当該リンクページ の下位の階層にブログがリンクされていることからすれば、ブログを中心とするサイトと いう登録者の主張は、信用することができない。ブログサイトは、発信者のコメントを目 立たせるように工夫するのが通例であるのにもかかわらず、登録者のサイトはそのように 設計されておらず、リンク集がトップページであるのにブログサイトと主張する理由が明 らかでないからである。 以上の事実からすると、登録者自身も個人ブログとして情報発信することより商業上の 利得を得ることを目的としてサイトを運営していることを認めていることが推認できる。 そして、上記認定を総合すれば、登録者による使用行為は、方針第4 条b(iv)に該当し、不 正の目的による行為であると結論付けることができる。 6 結論 以上に照らし、本紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン名「taobao.jp」 が申立人の日本における登録商標「Taobao.com」「TAOBAO」と混同を引き起こすほどに 類似し、登録者が当該ドメイン名について権利または正当な利益を有しておらず、登録者 のドメイン名「taobao.jp」が、不正の目的で使用されているものと判断する。 よって、方針第4 条i に従って、ドメイン名「taobao.jp」の登録を、申立人に移転する ものとし、主文の通り裁定する。 2013年3 月7 日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 佐藤恵太 単独パネリスト 別記 手続の経緯 (1)申立書受領日 2012年12月5日(電子メール)及び12月10日(書面) (2)手数料受領日 2012年12月10日 申立手数料の受領確認 (3)ドメイン名及び登録者の確認 2012年12月7日 JPRS へ照会 2012年12月7日 JPRS から登録情報の回答 回答内容:申立書に記載された登録者はドメイン名の登録者であること、JPRS に登録されている登録者の電子メールアドレス(以下「登録アドレ ス」)及び住所(以下「登録住所」)等 (4)適式性 日本知的財産仲裁センター(以下「センター」という。)は、2012年12月 12日に申立書中、登録者の記載、及び、申立人の代表資格に不備があると判断し てその旨を申立人に通知した。なお、申立書は、JP ドメイン名紛争処理方針のた めの手続規則の補則第10条の字数制限を超過していたが、センターは、その裁量 により、この点は不問に付した。 12月18日に申立人から上申書が提出され、センターは、2013年1月31 日まで申立書補正期間を延長する旨を通知した。センターは、1月8日に補正され た申立書ほか書面を受領し、申立書及び申立人の代表者資格が処理方針と規則に照 らし適合していることを確認した。 (5)登録者への通知日及び内容 1) 申立書送付日(手続開始日) 2013年1月9日(電子メール及び郵送) 2) 申立書及び証拠等一式 3) 答弁書提出期限 2013年2月7日 (6)手続開始日 2013年1月9日 センターは、2013年1月9日に申立人及び登録者には電子メール及び郵送で、 JPRS 及びJPNIC には電子メールで、手続開始日を通知した。 (7)答弁書の提出の有無及び提出日 センターは、2013年2月5日に答弁書を受領し、2月6日に、答弁書の補正 が必要と判断してその旨を登録者に通知した。センターは、2月14日に補正され た答弁書を受領した。同日、答弁書が処理方針と規則に適合していることを確認し た。 (8)パネリストの選任 2013年2月15日 申立人は1名のパネルによって審理・裁定されることを選択。 中立宣言書の受領日:2013年2月28日 パネリスト:佐藤 恵太 (9)紛争処理パネルの指名及び裁定予定日の通知 2013年2月15日 JPNIC 及びJPRS へ電子メールで通知 申立人及び登録者へ電子メール及び郵送で通知 裁定予定日:2013年3月7日 (10)パネリストへのパネリスト指名書及び一件書類受け渡し 2013年2月15日(電子メール及び郵送) (11)パネルによる審理・裁定 2013年3月7日 審理終了、裁定。